銀座のママ

私はOL時代、銀座にあるオフィスに勤めていました。

銀座って、やはり他の街とは違う街だな。と思います。
遊びと仕事が一緒になっている街なのに、品位を落とさず、不況下であっても色褪せない強いエネルギーのある街です。

そんな街で上手に遊ぶことは、世の男性にとっては憧れなのかもしれません。


随分前の話ですが、同僚の男性2名が銀座の有名なクラブ（えぇ、女性が隣に付くクラブでございます）に行ったときの話です。

そのクラブは、女性の私でも知っている銀座では有名なお店。
ママの誕生日ともなれば、中央通りまでずらっと並ぶ花輪の数々。花輪はカサブランカやカラーなどの大振りの花が綺麗に、そして銀座中に香るくらいの芳香を放っています。
当然お店の入っているビルは廊下や階段も胡蝶蘭の鉢がずらっと並んでいます。

そんな老舗のクラブに行った30代半ばの男性二人。
独身だった二人は、そこそこ小金は持っていたので、一晩ン十万くらいなら…と意気揚々臨んだ訳です

お店は想像通り格調の高そうな調度品に、女性もいつも行っているキャバクラとは全然違うタイプの「高嶺の花」

お酒を飲んでいる時も、とても気持ち良く乗せてもらえるし、何しろ銀座で飲んでいると言う優越感がずっと高揚感を生んでいたそうです

楽しいお酒を飲んで、お会計を済ませ、銀座畏れるに足らずなんて調子に乗っていたところへ、例の有名ママが登場。

「今日は初めてだったから　何も言いませんでしたけど、
このお店には　まだまだ早過ぎます。　もう少し偉くなってからいらっしゃってください（ニッコリ）」

と言われたそうです

すごいでしょう！　私この話を聞いた時、彼らは怒ったんじゃないかと思ったんです。

でも、なんと　この二人。

「よし、偉くなったら必ずここに来よう！」と、さらに意気が揚がったそうです

なぜか「偉くなってからいらっしゃってください」の一言でママに認められたと思えたそうなんです。
男心というか男性の自尊心は不思議です

銀座のママが男性を育てるとよく言いますが、この男心を上手にくすぐる一言。

結局この二人のうちの一人は社長になりました
きっといつかは、あのクラブに行って接待でもしたいと思っていることでしょう。

そしてきっと、一生通い続けるでしょう。
「ママに言われたから頑張ったよ～」とか言いながら

銀座が品位を落とさず、不況でも色褪せないのは、ママたちの毅然とした店のポリシーが守られているからなんですね。
お客様を選ぶということは、不遜で時として反発も買いますが、そういったお店に選ばれたというお客様の自尊心を満たすことにもなりますし、お店の品位を守るというオーナーとしての最低限の義務なのかもしれません。

仮にそのような言葉で怒ったり、恨みに思ったりするような度量の小さなお客様は必要ないと、そこで選別しているのかもしれません。

それをするには、お店側には絶対的な自信が必要ですね

私にはまだまだ出来ないことではありますが、自分のサロンのポリシーはどんなことがあろうと守ろうと思います。それで立ち行かなくなった時には、それは私の役割が終わった時なのだと考えて…。